不動産私募ファンドに関する実態調査
 ~2023年7月 調査結果~

株式会社三井住友トラスト基礎研究所

     本調査は一般社団法人不動産証券化協会(ARES)と株式会社三井住友トラスト基礎研究所(SMTRI)が共同で実施した、第3回「不動産私募ファンドに関する実態調査」である。SMTRI単独では、2003年12月より本調査をアンケート形式で行っており、今回の調査で36回目となる。共同調査への移行後は、有効回答率が増加しており調査精度を高めることができている。

  - 調査対象:国内不動産を対象に不動産私募ファンドを組成・運用している不動産運用会社
  - アンケート送付先数:149社
  - 回答社数:86社(有効回答率:57.7%)
  - 調査時期:2023年7月~8月(2023年6月末基準)

不動産私募ファンドの市場規模は、私募REIT・グローバルファンドを含めて33.4兆円と推計

  • 上記アンケート結果およびヒアリング・公表情報をもとに、2023年6月末時点の不動産私募ファンド(私募REIT・グローバルファンド含む)の市場規模(運用資産額ベース)を33.4兆円と推計した。この数値は、ARESが把握している国内私募REITおよびSMTRIが把握しているグローバルファンド(※)の国内不動産運用資産額を含めている。前回調査の運用資産額(2022年12月末時点:29.7兆円)から約3.7兆円(約12.4%)増加し、不動産私募ファンドの市場規模拡大ペースが加速している。運用資産規模を拡大させた運用会社数が規模を縮小した運用会社数を大きく上回り、円安進行を背景とした外資系運用会社だけでなく、国内運用会社でも大幅に資産規模を拡大させた運用会社が多くみられた。特に、私募REITは、運用資産額の増加率が前回の+2.8%から今回+11.5%へ加速しており、国内投資家の旺盛な投資意欲を背景に、銘柄数・資産規模ともに順調に拡大している。また、海外投資家資金については、円安進行に加え、①コロナ禍からの経済回復が進み成長率が高まる日本国内の状況および②金利上昇が続く欧米と比べ安定して厚いイールドギャップを維持していることを背景に引き続き流入しており、国内投資家資金とともに不動産私募ファンド市場を更に拡大させていることが確認された。

    ※グロ-バルファンド・・・日本以外の国も投資対象とするファンドとして定義

投資家の意欲は総じて堅調。海外金融市場の変調による投資方針の変化は過半が「影響なし」

  • 運用会社から見たエクイティ投資家の投資意欲は「変化はない」との回答が大半を占めており、堅調な投資意欲が改めて確認された。ただし「低くなってきている」が「高くなってきている」の回答数を上回り、投資家の投資意欲が減退していると考える運用会社がわずかに増加している。海外投資家については、全ての属性で「減少」との回答が見られたが、その中で、海外富裕層は「増加」の回答割合が3割弱となり、「減少」を大きく上回った。慎重姿勢をとる海外投資家がやや増加する一方で、日本の不動産投資に積極姿勢を続け、投資額を増加させている海外投資家も引き続きみられる。
  • 海外で金融引き締めにより金利が大幅に上昇し、米地銀などで信用不安が発生していることの影響について、投資方針の「変化があった」とする回答は14%にとどまった。ただし、投資方針の変化はなかったが「今後ありうる」とする回答が42%を占めており、今後の動向を注視する姿勢がうかがえる。「変化があった」とする回答のうち、変化の内容について回答数が最多となったのは「投資額の縮小」「取得価格目線の低下」であった。

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