国内不動産市場の見通し ~不動産投資ニーズの拡大と賃貸市場の底打ち・反転期待の高まりから不動産取引は回復へ~

株式会社三井住友トラスト基礎研究所

 株式会社三井住友トラスト基礎研究所は、国内主要都市の不動産市場の見通しを示した不動産マーケットリサーチレポート※の最新号(2012年10月時点調査)をとりまとめました。今回の改定で、調査時点の足元動向と要因、および中期的な経済環境の見通しを踏まえ、不動産市場の見通しをやや上方修正しました。本稿では、その概要を示します。

 ※ プロパティタイプ別(オフィス、賃貸住宅、商業施設、物流施設、ホテル)の賃貸市場、および投資市場(キャップレート)で構成

不動産賃貸市場の見通し

 オフィス市場においては、テナント移転の活発化に伴う需要の増加に加え、2012年夏頃からはリーマンショック後に著しく縮小して手狭感の強かったオフィスを見直す動きにより館内増床が増加しています。2013年は2012年下期の一時的な景気後退の影響で雇用が悪化し、需要が伸び悩む可能性はありますが、ほとんどの主要都市で供給抑制が一層強まるため、空室率の低下が進むと予想されます。2014年も供給抑制が続く一方で、緩和的な金融環境の下で円安が進み、輸出主導で比較的高い経済成長になると想定され、需要は再び増加傾向を強めて空室率の低下が続くと予想されます。平均成約賃料は2012年にほぼ底打ちした後、2013年には底離れし、その後は中期的に上昇していくと予想されます。主要都市の中では、空室率の低下や景気回復の影響が反映されやすい東京の賃料上昇率が高くなると考えられます。

 賃貸住宅市場においては、新規供給は今後若干増えるものの、職住近接が可能な好立地での供給に限定され、低水準で推移すると予想されます。一方、賃貸需要については、借家に居住する比率の高い若年層の減少が下押し圧力にはなりますが、大都市への人口流入や世帯分化、分譲住宅の取得能力低下(金利上昇・所得伸び悩み等)等が上押し圧力となり、緩やかに増加していくと予想されます。そのため、改善が進んできた主要都市の需給バランスは概ね今後も維持され、賃料は底堅く推移すると見られ、需要が堅調な東京においては緩やかに上昇していくと予想されます。

 賃貸住宅と比べて市場の底打ち・回復が遅れていたオフィス市場に明るさが見えてきたことは、不動産投資の活発化を促すポイントとして、注目されます。

不動産投資市場の見通し

 新興国の人口増加や経済成長に伴い過剰流動性が継続しています。加えて、債券利回りの低下や株価低迷による運用難が続く中で、少子高齢化が進む先進国の機関投資家には、リスクを低減しつつ、より高いリターンを確保したいというニーズがあります。このような状況から、オルタナティブ投資が増加しており、リスク分散と安定したインカムリターンの確保という観点から不動産投資も増加しています。

 そのような中で、日本の不動産市場の安定性は高く、ここにきて主要セクターであるオフィス市場の底打ち・反転期待が出てきました。他の海外主要都市と比べて市況回復が遅れた分、投資タイミングとしては良好な時期にあります。これまでは、キャッシュフローの安定性と価格調整に伴うオポチュニティが評価された住宅、キャッシュフローの安定性と構造変化に伴うオポチュニティが評価された物流施設に先行的に投資資金が流入してきましたが、今後は賃貸市場の底打ち・反転期待からオフィスへの資金流入が増加し、さらに過度なリスクプレミアムを払拭するかたちで商業施設へと資金流入が拡大していくと考えられます。また、投資家のリターン目線の低下により、国内の不動産取引が活発化し、キャップレートは低下していくと予想されます。

詳しい内容は、三井住友トラスト基礎研究所発行「不動産マーケットリサーチレポート 2012年10月時点調査」(有償)に記載しています。ご関心のある方は、不動産マーケットリサーチレポートご案内のページをご覧ください。

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