取引価格情報を用いた地価の実勢トレンドと土地需要の地域差に関する分析

投資調査第2部 研究員 竹本 遼太

<要約・概要>

 少子高齢化を伴う人口減少時代が到来し、都市規模の縮小が予想される今後の日本の不動産市場においては、地域間の優勝劣敗が進むとみられることから、不動産投資にあたっては、全体的な地価動向の把握以上に取引対象地域の選別が重要になると考えられる。

 しかし、土地需要の地域差を評価するにあたり、土地の取引価格は個別の取引事情による影響を大きく受けることから、地価動向の実勢を把握することは容易ではない。本稿では、土地の取引価格情報に含まれる面積や駅距離、形状といった価格形成要因の影響を調整した上で、土地の鑑定評価額と比較することで、東京圏1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)における地価の実勢トレンドや地域による土地需要の強弱を評価した。

 分析によって得られた主な知見は以下の通りである。

  • 取引価格は鑑定評価額に1四半期~2四半期先行する傾向を持ち、鑑定評価額より変動が大きい。
  • 地域的な土地需要の強弱は、都心へのアクセスの良さ、近隣を走るJRや私鉄等の鉄道路線による影響が大きい。また、2011年の東日本大震災以降、液状化リスクの高い地域において相対的に鑑定評価額より低い価格での取引が目立っている。

 土地の取引価格に含まれる個別事情を統計モデルによって調整する本稿の分析手法を活用することで、地域別に需要の強弱を比較することによる取引地域の選別に加え、地価の実勢トレンドのタイムリーな把握や、対象地の属性が地価に及ぼす影響の定量的な評価などが可能となる。

時点要因の推計結果(東京23区)

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