三大都市の住宅地価は上昇ペースが若干鈍化(2015年地価公示)
~地価の回復傾向は大都市から地方へ波及~
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2015年地価公示における注目点
今月18日に平成27年(2015年)地価公示が公表された。今回の地価公示において注目されたのは、①大都市部における地価の上昇ペースが加速したのか/鈍化したのか、および、②大都市部の地価回復が地方都市に波及したのか/大都市と地方で地価の二極化が進んだのか、の2点であった。
三大都市の住宅地価は上昇ペースが若干鈍化
まず、①については、三大都市(東京23区、大阪市、名古屋市)の住宅地における地価上昇ペースは前年比+1.6%と、同一調査地点の2014年地価公示における同+1.7%から若干ながら鈍化した(図表1)。ただし、これは名古屋市の地価上昇率が縮小したことの影響が大きく、東京23区と大阪市では上昇率が若干ながら拡大しており、大都市部の住宅地価の上昇が踊り場を迎えているとまでは言えない結果である。
一方、三大都市の商業地では、地価上昇率が前年比+3.3%と、同一調査地点の2014年地価公示における同+3.0%に比べてやや加速した。
三大都市を除く政令指定都市では、住宅地価は前年比+0.8%と、2014年と同じペースで地価上昇が続いており、商業地価は前年比+1.6%(2014年は同+1.3%)と小幅ながら上昇率が拡大した。
地価の回復傾向は地方にも波及している
次に、②について、政令指定都市以外の地方部では、住宅地・商業地ともに、地価下落率のマイナス幅が縮小した。住宅地価は、人口20万人以上の市町村(東京23区および政令指定都市を除く)で前年比-0.3%、人口5万人~20万人の市町村では同-0.7%、人口5万人未満の市町村でも同-1.8%と、地価の下落は続いたものの、2014年に比べてそれぞれ下落ペースは緩やかになり、大都市で先行した地価の回復傾向が地方にも波及している様子が示された。
人口20万人以上の市町村の中では、福島県の郡山市やいわき市で地価上昇ペースの拡大が住宅地・商業地ともにみられた。郡山市は、住宅需要が旺盛で土地不足感が広がっているほか、復興関連の事業所や公的機関の入居により駅前ビルの空室率が低下、ホテルの稼働率も高いとされる。いわき市では、原発事故による被災者の需要が集中している上、津波と地震の被災者の需要や一般の住宅需要も重なっており、背後の住宅地価の上昇に伴い商業地価も上昇している模様である。他には、北陸新幹線の開業に伴い、駅周辺の開発プロジェクトが進んでいる石川県金沢市や富山県富山市でも、商業地の地価上昇ペースが拡大した。
人口5万人~20万人の市町村では、仙台北部道路が全線開通して利便性が増したこともあり、住宅地需要が強いとされる宮城県富谷町の住宅地や、駅前で大規模商業施設の開業や改装が続く東京都立川市の商業地において、地価上昇の加速がみられた。また、千葉県君津市では、住宅地・商業地ともに宅地の供給が少なくなってきたことで、地価上昇ペースが拡大している。一方、滋賀県高島市などでは、人口の減少や商業集積の低下により商業地価の下落が加速しているほか、北海道岩見沢市など住宅地の下落が加速している地域も少ないながら残っている。
東京23区の商業地における取引実勢地価は、上昇基調が維持されている公算強まる
以上のように、2015年地価公示では、①大都市における住宅地価の上昇ペース鈍化と商業地価の上昇ペース加速、および、②地価回復の地方への波及、の2点が確認された。なお、実際の取引価格である「不動産取引価格情報」に基づいて推計した取引実勢地価と比較すると、東京23区の住宅地では取引実勢地価が上昇幅を拡大させており、2015年地価公示(鑑定評価)による地価上昇ペースの拡大と整合的といえる(図表2)。
一方、商業地では、取引実勢地価の上昇が踊り場を迎えた可能性がうかがわれていたものの、地価公示における鑑定評価では上昇ペースの拡大が示された1)。商業地は土地取引件数が相対的に少ない用途であることから、取引実勢地価は推計値が上下双方に振れやすいことを勘案すると、2015年地価公示の結果は、東京23区の商業地における地価の上昇基調が足元でも維持されていることを示唆していると言えよう。
1) 取引実勢価格については、2014年11月5日付の当社レポート「商業地やプライム住宅地で地価上昇が踊り場を迎えた可能性」を参照。
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