不動産市場・ショートレポート(8回シリーズ)
コロナ禍で不動産市場は何が変わったか③/賃貸市場(住宅)
雇用所得環境の悪化が、人口流入減少・賃料負担力低下を招き、賃貸マンション需要は短期的に弱含む
賃貸マンションの賃料は、多くの主要都市において、概ね上昇基調で推移してきた。その点は、各種マンション賃料インデックスの動向で確認できる。全国的に少子化が進み、需要層が逓減していく中にあっても賃料の上昇が続いてきたのは、都市部への人口流入が賃貸マンション需要を維持・増加させてきたことが大きい。人口の流出入の指標である転入超過率((転入者数-転出者数)÷総人口)を見ると、年齢帯別には多くの都市で20-24歳が転入超過の大半を占めている。特にこうした若年層の多くは、就業機会を求めて都市部に流入する傾向がある。 しかし足元では、コロナ禍を受けて都市部でも若年層が求める職種等の就業機会が減少し、大都市への人口流入が弱まっている。また都道府県別の完全失業率と転入者数・転出者数との関係から2020年以降の転入超過数をモデルで予測すると、多くの大都市で対2019年比での減少が見込まれる。
更に、東京23区では、2020年1~11月の転入超過数の実績見込値が、前述の予測値(2020年のモデル推計値)を大きく下回った。この乖離は、モデルに取り込めていない雇用環境以外の要因によるものとなり、主には、リモートワークの普及により、通勤利便性の優先度が低下し、外縁部の専有面積が広い住戸の志向が高まるなど、居住地選好が変化したためと考えられる。その乖離幅は、実に東京23区の人口を約0.2%純減させる大きさである。
以上のように、全国の大都市において、雇用環境の悪化に伴う人口流入の減少が続く見通しであり、雇用環境の悪化で賃料負担力の低下も続くだろう。東京ではリモートワークの影響も大きそうだ。しばらくは、新規居住者の主な受け皿となる賃貸マンションの需要および賃料は弱含む公算が強い。
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