PPP・インフラ投資調査部 副主任研究員
岩瀬 有加
ベネフィットコーポレーションのまちづくり会社への応用
要約・概要
営利会社ではあるが、環境や社会に配慮した活動も行う法人として、米国のベネフィットコーポレーションが注目されている。通常の株式会社と異なり、株主利益だけでなく、公共利益の追求も目的としている点に特徴がある。州法である会社法で規定されているため、法的安定性も高い。
日本には、ベネフィットコーポレーションのような制度化された法人形態は存在しない。ただ、岸田首相が議長を務める「新しい資本主義実現会議」において、民間が公的役割を担う新たな企業形態としてベネフィットコーポレーションが取り上げられ、法制度整備の必要性も検討されている。
日本にも、ベネフィットコーポレーションが誕生する機運はある。ベネフィットコーポレーションに類似するものとして、Bラボという非営利団体が認証を与えるBコープというものもあるが、こちらは国内にも既に約30社が存在している。また、定款により、配当、残余財産の分配を制限し、株主ではない第三者に分配する非営利型株式会社という形態もあり、実際にまちづくり会社に適用された事例もある。
こうしたことから、日本でベネフィットコーポレーションが制度化されれば、地域のまちづくりに適合すると考える。地域単位での良好な環境づくりや価値の向上は、近年、大きなテーマとなっている。こうした社会的課題の解決に、住民や事業者などによる主体的なまちづくり活動、すなわちエリアマネジメントを行っている地域も多い。しかし、その多くは、任意団体やNPO法人が中心となって行われており、十分な資金の確保が難しい場合も少なくない。その点、ベネフィットコーポレーションの営利会社としての一面が、この問題を解決してくれるだろう。また、地域の課題には、その地域特有のものも多く、自治体、住民、事業者など多数の関係者と連携し、長期的に取組むことが必要となる。ベネフィットコーポレーションの社会的な一面は、この問題の解決に有益といえるだろう。
(本レポートは、一般社団法人不動産証券化協会「ARES不動産証券化ジャーナルVol.75」掲載論文を基に、加筆・修正したものである。)