私募投資顧問部 副主任研究員
竹田 優里
AMタイプ別にみた不動産私募ファンドのLTV分析②
要約・概要
不動産証券化協会および三井住友トラスト基礎研究所は、不動産運用会社へのヒアリングによる「不動産私募ファンドに関する実態調査」を半期に一度実施している。調査の結果、私募REITを除く私募ファンドの平均LTVは、直近2024年7月調査では65.1%と、2016年1月調査以降最も高い数値となった。その背景には、①コア投資における不動産価格高騰下での利回り確保と、②高LTVを含む、より高いリスクを取って高いリターンを獲得する戦略の増加の2つの要因があると考えられる。
実態調査では、今後1年以内に組成予定のファンドの平均LTVも調査している。直近2024年7月調査では運用中ファンドの平均LTV65.1%を上回る66.4%となり、足元の上昇がやや目立つ。コア投資でもLTVは引き続き高めに設定され、コア投資以外ではよりハイリスクハイリターンを狙う戦略が続く可能性が高いと考えられる。
ただし、金利の動向には今後も注視していく必要がある。金利が一段と上昇すると、デットコストが一層上昇し、デットの利払い後の利回り確保のためにLTVを高める動きが再び増加する可能性がある。一方で金利の上昇がキャップレート上昇に目立った影響を及ぼすまでになると、不動産価格低下を見据えて金融機関の貸出意欲が低下し、一転してコア投資のLTVが低下する可能性がある。不動産価格の低下が現実化すると、バリューアッドやオポチュニティファンドの物件取得が活発になり、当該ファンドのLTVの上昇に繋がる可能性があるものの、国内市場においてはバリューアッドやオポチュニティファンドと比較してコアファンドの市場規模が大きく、全ファンドの平均LTV は低下に向かうと考えられる。
関連レポート・コラム
-
不動産私募ファンドに関する実態調査
~2024年7月 調査結果~ (2024年9月19日) -
不動産私募ファンドに関する実態調査
~2024年1月 調査結果~ (2024年3月15日) - AMタイプ別にみた不動産私募ファンドのLTV分析 (2024年3月12日)
最近の執筆レポート・コラム