地方創生DAOと共に関係人口拡大を促す官民連携手法の提案

PPP・インフラ投資調査部 上席主任研究員   浅川 博人

要約・概要

  • 都市部住民のライフスタイルの多様化に応えつつ、地方経済の担い手を確保するために、都市部の現役世代が主体的に地方のまちづくりに参加する「関係人口」の拡大が期待されている。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す。

  • 近年では関係人口によるまちづくりの新たな手法として、ブロックチェーン技術を活用したDAO(ダオ、Decentralized Autonomous Organization[分散型自律組織])と地域の連携が期待されている。このような、地方活性化を目的とするDAOは「地方創生DAO」と呼ばれ、一部の地域で活動が始まっている。

  • 地方創生DAOの特徴としては、(1)メンバー間の合意によるフラットな意思決定がされること、(2)トークン発行に伴う販売収益(マネタイズ手段)が存在すること、(3)地域を問わず誰でも参加できること、の3点が挙げられる。これらの特徴により、対象地域との地縁(血縁や訪問歴等)がない人も主体的にまちづくりに参加し、関係人口の拡大につながることが期待されている。

  • しかし、地方創生DAOの運営はまだ試行錯誤の段階にある。地方創生DAOのさらなる展開に必要な施策は、(1)地域のニーズとDAOによる貢献のマッチング、(2)バーチャルな活動からリアルな活動への移行促進と、(3)ガバナンス上の不明瞭さの解消である。

  • これらの施策の具体案として、課題特化型DAOの組成、スモールコンセッションの活用によるDAOと住民・自治体・事業者の連携を提案する。こうした官民連携を実現するためにも、法制度面では非営利法人DAO設立の解禁が期待される。

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