REIT投資顧問部 副主任研究員
小西 勝也
J-REIT市場の分析におけるテクニカル指標の有効性の検証
<機械学習モデルを用いた市場パフォーマンス予測>
要約・概要
- 本稿では、テクニカル指標を用いてJ-REIT市場のパフォーマンスが予測可能かどうかを定量的に検証した。J-REIT市場のパフォーマンスを予測する際には、不動産賃貸市場や売買市場、資金調達環境等のファンダメンタルズを分析して、その見通しを基に予測することが一般的である。しかし、市場センチメントの急速な悪化などその他の要因により、ファンダメンタルズから想定される価格から乖離して推移するような局面では、ファンダメンタルズによる将来予測は困難なことが多い。
- そこで、本稿では、過去の価格の動きを基に市場センチメントや需給状況などを推測することで将来の価格を予測するテクニカル分析を用いることとした。
- 分析の結果、テクニカル指標のみでも一定の精度でJ-REIT市場のパフォーマンスを予測することが可能であること、ファンダメンタルズの一つであるマーケット指標と併用することでより高い精度での予測が行えること、予測値算出への貢献度はマーケット指標がテクニカル指標を大きく上回ることを確認した。予測精度は半月程度の予測期間で最も高く、特に市場センチメントの影響を強く受けたと見られる2024年の予測精度は他の年を大きく上回った。
- また、予測への貢献度の高いテクニカル指標の分析からは、J-REIT市場ではトレンドの持続性が強く、その勢いがトレンドの継続性や反転可能性など、相場の将来の方向性に影響しているという考察を得た。特に足元のようにファンダメンタルズによる将来予測が困難な状況では、そうした考察を活かして市場動向を見通すことは有益だと考えている。