ドイツ不動産オープンエンドファンドの現状
 ~金融危機後のドイツの対応~

私募投資顧問部 研究員   三武 真知子

<要約・概要>
 国内の非上場不動産オープンエンドファンド(以下、「私募REIT」)の運用資産額の合計が節目となる1兆円を超え、私募REIT市場は順調に拡大している。日本の私募REIT は2008年の金融危機後である2010年に運用が開始されたまだ新しい金融商品であるが、海外では、米国やドイツを始めとして古くから不動産オープンエンドファンドが金融商品として認知されている国も多い。とりわけ、ドイツにおいては40年超の歴史を持ち、機関投資家だけでなく一般国民の間にも広く普及しており、非上場不動産ファンド市場の規模としては、ドイツが日本を上回っているともいえる。
 ドイツの不動産オープンエンドファンドは、その歴史の長さゆえ市場サイクルも経験しているが、特に2008年の金融危機によって甚大な影響を受け、償還停止、清算へと追い込まれた銘柄が多数にのぼった。この事態に当局は規制強化に向けて動き、投資家保護の徹底と投資市場全般の透明性向上を趣旨とする法改正が行われ、不動産オープンエンドファンドの商品特性も大きく変化することとなった。
 金融危機後の混乱を乗り越えて、市場が整理され安定を取り戻しつつあるドイツ不動産オープンエンドファンド市場。本稿では、市場の現状と商品の特徴、そして主に金融危機前後の法的規制面での変遷を概観し、今後の日本の私募REIT市場が学ぶべき点について考察する。

ドイツと日本の非上場不動産ファンド市場規模の比較(2014年12月末時点)

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