拡大を続けるドイツ不動産ファンド市場

私募投資顧問部 副主任研究員   三武 真知子

要約・概要

 ドイツの不動産オープンエンドファンド市場が順調に拡大している。他国の主要市場と比較すると、市場規模は米国に次いで2位であり、英国と日本を大きく引き離している。一方、資金純流出入の観点では、近年純流出の状態が継続している米国・英国市場とは対照的に、機関投資家向けの不動産スペシャルファンド市場、一般投資家向けの不動産リテールファンド市場ともに、純流入の状態が継続している。パフォーマンスの観点でも、ボラティリティの大きい米国市場・英国市場と比較して、低位ではあるが安定的に推移している。

 ドイツ市場において、投資資金の純流入と市場規模の拡大が継続している要因の一つに、金融危機後の法改正がある。金融危機時の教訓から投資家保護を主眼とした法改正が行われたことにより、リテールファンドの流動性は大幅に制限されることになったが、市場での個人投資家資金と機関投資家資金の分離、棲み分けが進み、リテールファンド市場、スペシャルファンド市場ともに市場規模の拡大が継続している。2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大時にも新法による規制は有効に働き、市場からの資金流出を防ぎつつ市場規模の更なる拡大に寄与した。

 インフレと金利上昇局面において不動産市場への逆風が強まる中、ドイツ不動産ファンド市場において資金の純流入と規模拡大が継続していくか、今後の行方が注目される。

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