投資調査部 上席主任研究員
川村 康人
J-REIT不動産価格指数・NOI指数・キャップレート(2024年版)
要約・概要
- J-REITによる2024年2月末までの不動産取引および2023年12月末までの決算データを用いて、主要3用途(オフィス、住宅、物流施設)の不動産価格指数、NOI指数、キャップレートの動向を算出した(第2節)。
- 2023年中の不動産価格は緩やかな上昇が続いたが、年後半になるほど価格上昇率は緩やかとなっている。オフィスについては、不動産価格(=NOI÷キャップレート)の分子であるNOIは、賃貸市場の悪化を受けて緩やかな下落が続いているものの、分母のキャップレートがそれ以上のペースで低下しているため、不動産価格の上昇が続いている。住宅および物流施設については、不動産価格(=NOI÷キャップレート)の分子であるNOIが堅調に推移すると同時に、分母のキャップレートも一段の低下が進み、分子・分母の両要因が不動産価格の押し上げに寄与した。
- 2023年中は名目長期金利の上昇が続く中でも、J-REITの取引キャップレートは緩やかな低下(不動産価格の上昇)が続く結果となった。キャップレートに対して押し下げ圧力となるマクロ経済要因、とくに建築費の上昇による影響について、うちNOIへの影響と不動産価格への影響に分解しつつ、分析を行った(第3節)。
- 新型コロナ発生前の2019年末と比較すると、2023年末時点では一般物価の影響を除いた実質ベースの建築費(工事原価)は15%程度上昇した。統計モデルによる分析の結果、これは、NOIを約2.8%押し上げる効果を持つものの、同時に不動産価格を約8.3%押し上げる効果を持つため、キャップレートに対しては約5.5%の押し下げ圧力(例: 4.00%→3.78%で約22bpの押し下げ圧力)となったことが確認された。
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