小さなコンセッションが起こす大きな潮流
~スモールコンセッションに期待すること~

PPP・インフラ投資調査部門長 兼同部長    福島 隆則

要約・概要

 昨年来、政府は官民連携事業の裾野を広げる目的で、「スモールコンセッション」を推進している。スモールコンセッションとは、地方公共団体が所有・取得する小規模な遊休不動産(空き公共施設等)を、コンセッションなどの官民連携事業で、地域課題の解決やエリア価値向上につなげる取組みのことである。その為、スモールコンセッションの推進は、官民連携事業の"地方圏・小規模化"を進める動きと言うこともできそうである。

 こうした動きは、これまで官民連携事業に参画できなかった地方の企業や金融機関には好意的に受けとめられている一方、官民連携事業に慣れた大手の企業や金融機関には冷淡に受けとめられることも多い。それぞれの目指すゴールが違う為、仕方ないところではあるが、こうしたことで我が国の官民連携という産業が、都市圏・大規模と地方圏・小規模という2つのマーケットに分断されるのは好ましくない。

 それでは、どうすればよいか。例えば、スモールコンセッションで、大規模なコンセッション事業ではやりづらかったスキームや手法の試行、あるいは未解決の課題に挑戦するようなことができないだろうか。そして、スモールコンセッションで成功したことは、大規模なコンセッション事業に還元する。こうした流れを作ることで、我が国の官民連携全体を発展させられないだろうか。より具体的に、本稿では、株式会社に留まらないPFI事業におけるSPCの多様化、SPC株式の流動化によるセカンダリー市場の育成、所謂"6条提案"の利用拡大の可能性を考察している。

(本レポートは、一般社団法人不動産証券化協会「ARES不動産証券化ジャーナルVol.78」掲載論文をもとに、加筆・修正したものである)

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