「私募REIT運用あり」の運用会社はESG取組率が高い結果に
気候変動への対応は途上、開示に向けた検討が求められる

~「不動産私募ファンドに関する実態調査」(2024年7月調査)の結果から~

私募投資顧問部 上席主任研究員   菊地 暁

要約・概要

 不動産証券化協会・三井住友トラスト基礎研究所は、不動産運用会社を対象とした「不動産私募ファンドに関する実態調査」を実施しており、直近9回ではESGに関する取組状況を調査している。

 2023年7月調査から調査項目を追加し、より具体的な取組状況を把握しているが、調査開始以来ほぼ一貫して伸長していた取組率(回答社全体のうち取り組んでいるとする回答社の割合)は、全体的に一服した感がある。そうした中でも、ほとんどの項目において、私募REIT運用会社の取組率は私募REITを運用していない会社より高い結果となり、改めて私募REIT運用会社のESG取組意識の高さが確認された。

 気候変動への対応に関しては、「投資家からの開示要請の高まり」を「意識している」との回答割合は全体集計で73%、私募REIT運用会社では84%と高い結果となった。その一方で、気候変動への対応方針を社内で決定しているとの回答社は41%にとどまり、「戦略」と「指標と目標」に関する項目の実施は23~36%であった。私募REIT運用の有無によるクロス集計では、こちらも「私募REIT運用あり」の回答社は気候変動への対応が進んでいる結果となった。現在、気候変動に関する財務インパクトの開示要請はますます強まっている。国土交通省「不動産分野TCFD対応ガイダンス(改訂版)」の活用や先進事例等を参考に、開示に向けた具体的な検討が求められる。

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